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2009年10月29日 (木)

夏目漱石「こころ」はBLか?検証感想文

※「感想文」検索で来て下さった方、ありがとうございます!

 「高得点狙いの読書感想文の書き方」アップしました。ご参考に☆

※2009年6月10日 (水)の日記再掲

 

************

 

夏目漱石の「こころ」は、高校の教科書に載っている。

昨年高2だった長女が授業で「こころ」を習っていた時に

「おかあさん、読んだことある? 複雑な話や・・・・何とも言えん。」と漏らしていた。

 

そして先日、友人のブログに「こころ」はBLの走り?的な日記を見、

・・・ええっ??「こころ」ってそんな話だったの??と、非常に不純な動機で読み始め

朝から一日かけて「こころ」を読破した。

 

すると、確かに

「え・・ぇっ??」って箇所は多い。

主人公「私」(高校生・男子)が「先生」(年齢不詳・既婚・男性)を鎌倉の海(由比ガ浜)で見かけ、

翌日も、更にその翌日も、出会った同じ時間に海へ行き、

先生を見つけると、後をつけて泳ぐ・・・。

・・・海辺での出会いだから当然だか、男達は皆、半裸。

しかも明治時代のこと。水着はなく、猿股の下着一枚の姿ってのが・・・

映像にして思い浮かべると、かなり赤面。。。(なぜ思い浮かべる???)

そして、なんだかんだで知り合いとなり、月に3回は先生のお宅へ遊びに行く、という関係に。

高校卒業前から大学卒業までの期間、週一ペースで先生に会いに行っていたわけで・・・

 

正直、ちょ~~~~っと、どうなん??って気はする。

しかも、「私」は大学を卒業する年になっても、恋をしたことがない。

 

上野にお花見に行ったシーン(上 先生と私 十二)の

先生と私の会話は、なんだかドキドキさせられる。

 

「しかし・・・しかし君、恋は罪悪ですよ。解っていますか」

 

・・・なんという色気のあるセリフでしょう!

しかも、先生は人のいない森の中に来てから私に

「異性と抱き合う順序として、まず同性の私の所へ動いて来たのです。」とまで言う。

このくだりで、もうBLって言われても仕方ないなぁ・・・と納得。

そもそも、男二人で桜の樹の下をお花見して散歩している絵だけで、それっぽいぞ~~

 

「私」は「恋とは違います」とはっきり答えるのだけど、

先生が「あなたに満足を与えられない」と言うと「変に悲しくなった」りする。

このあたりの気持ちの押し合い、引き合いが絶妙で、

さすが夏目漱石!としか言いようが無い。

「こころ」は新聞の連載小説だったわけだけど、こりゃ毎朝、ドキドキして読みますわ!!

 

でもね、本当のことを言うと、これが恋ではない恋慕であると、私にはわかるの。

私にも、そういう先生がいたから。

 

その先生のことがとっても好きで、先生の言葉は一つだって聞き逃したくなかった。

席は、いつも一番近くに陣取った。

少しでも先生の近くにいたかった。先生の魂に触れていたかった。

 

子どもから大人へなる19歳の年、

人生を生きていく大きな指針をくれた人。

年は、両親とほとんど変わらない。先生のほうが、ほんの少し若いだけだ。

 

もちろん恋愛感情ではない。大いなる尊敬と憧れの眼差しで先生を仰ぎ見ていた。

 

きっと、「私」もそういう気持ちだったんだろうなぁと思う。

 

でも、ここはあえて!

BLちっくに「こころ」を味わってみようじゃないか!!(ぇ??

 

「私」は先生の奥さんと二人で向かい合って話していても、美人の奥さんに全く「女」を感じていない。

・・・・当たり前のことかもしれないんだけどねぇ・・・・

 

(上 先生と私 八)の場面で

ほろ酔いで、少し上機嫌の先生が珍しく奥さんにも酌をする。

いい雰囲気で会話が続き、

「子供でもあると好いんですがね」と奥さんが漏らすと

「一人貰ってやろうか」と先生。

「貰ッ子じゃ、ねえあなた」と奥さんが私へ言うと

「子供はいつまで経ったってできっこないよ」と先生が言う。

黙る奥さん。私が「なぜです」と聞くと、「天罰だからさ」。

 

夫婦仲は悪くないけど、先生、奥さんを抱けないようだ。

それがなぜなのか、天罰とはどういうことかは、最後まで読めばわかる。

 

このやりとりから、奥さんはまだ子供を産もうと思えば産める年齢ではないかと推察する。

つまり、二十代後半~三十代前半ではないか。

先生と奥さんは、そんなに年齢差がない。

つまり、先生も30代くらいだと思う。

 

眼鏡をかけ厭世的な表情の和服の男性。

ツンデレで、しかも病んでて・・・・なんていいキャラクターでしょう☆

 

自分を慕う「私」がいつか、自分にガッカリし、復讐して来るのではないか、と常に心配している先生。

「私」は、なんでそんなことを言われるのかさえ、わからない。

それが先生の過去に関係していると気付き始め、郊外に二人で散歩した帰り道、

いつか、先生の過去を全て話してもらう約束をする。

 

そのシーン(三十一)も迫力のある緊迫した二人の会話が、・・・・素敵。

「私は死ぬ前にたった一人で好いから、他(ひと)を信用して死にたいと思っている。

 あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。

 あなたははらの底から真面目ですか」

 

・・・・・これ以上の告白があるかしら、、、、

そして、先生はこの約束を守り、「私」に長い手紙をくれる。

 

その中身が(下 先生と遺書)の全文。

遺書なんだけど・・・・もしかしたら、先生はまだ生きていて、

「私」が止めることができたんじゃないか、と期待してしまう・・・。

 

学生時代の友人Kと先生も大変、仲がいい。

しかし、二人共お嬢さんを好きになってしまうことが話の軸になっているから

Kと先生の間のBLは私は感じることができない。

 

それよりも、お嬢さんの「なんでそこで笑うねん?」的なイミフ笑顔に

先生がイラッとくるというのがリアルだなぁ、と思う。

でも、それもKが来るまでは、全然気にならなかった、というのも更にリアル!

それまでは、お嬢さんが笑っている顔を見ているだけで幸せだったのよね、きっと。

それが、Kのおかげで嫉妬メラメラ。

 

(三十三)の段の

雨の日にKとお嬢さんが連れ立って歩いているのにすれ違うシーンは

読んでいても胸が苦しい。

激しい嫉妬に苦しんでいる先生にKがお嬢さんへの恋を打ち明けるのだから

ほんと、痛い・・・。

お嬢さんの態度も、嫉妬に燃える先生の目線で書かれていることもあって

Kのことが好きなのかな?とさえ思わせる微妙な感じ。

 

でも、先生からの結婚の申し出を母親から聞き、承諾したのは、きっと

先生のことが好きだったからに違いない。

Kへ特別な好意があったとは思えない。

 

お嬢さんにしてみたら、意識しない分、Kの方が話しやすかったのかもしれない

・・・だとしたら、とても罪な話だけど。

 

文豪・夏目漱石のすごいところは、

人物一人一人の心情のとても細かいひだまでを自然と描き出していること。

ものすごくリアルだ。

男性の気持ちはいうまでもなく、

未亡人である奥さんの細かい心理、

女学生のお嬢さんの無邪気な気持ち、

更には、

(中 両親と私)で描かれる、

母親が、病気の父親の意識がしっかりしている今のうちに就職を決めて安心させてやってほしい、という気持ち。

 

「私」が先生と両親を比べて、先生のほうが尊敬できる、両親は田舎くさい、と思う気持ち。

一つ一つが、なんでこんなに?と思うくらいリアルだ。

ものすごく引き出し多いなぁ・・・・。

 

教科書には、(下 先生と遺書)の一部分が掲載されているが、

できれば、そんなに長くないので全文通して読むといいと思う。

 

高校生の時に読むのと、

今、年月を経て読むのと、また感じ方が違う。

深く理解できる。

いい読書は、心に残るね。

一日で読み切るのは、ちょっとしんどかったけど

読んでみてよかったなぁ~

 

*******

 

「こころ」の感想文で悩み、検索で来てくれている方が、かなり多いようなので追記。

 

上記の感想で、あえて書かなかった「Kのついて」私の思うところを語ります。

 

「こころ」を読むと、Kはとても堅物の変わり者のような印象を受ける。

 

現在を生きる、私を含む全ての日本人に、どのくらい残っているだろうか?

「理想に生きる」

「志高く生きる」美徳。

美しく生きることの価値感。

 

・・・・そういう感覚は、とても古臭いものになっていないか?

サムライの武士道のように。

そう、侍の精神は

気高くいることが、自分を支える根幹だった。

 

しかし、現実問題、人生を生きていくには、時に泥水もかぶる。

道に迷うこともある。

そんな中、自分の中でプライドと現実に折り合いをつけながら生きていくのが、普通だ。

 

現在の中高生に、

修行僧のように孤高に、志高く生きていこうとするKの気持ちは、少しでも理解されるのだろうか?

 

私は小6の時に「気高く生きたい」と願い、

中学に入って、「現実」が見え、面食らった。

プライドを高く持ち過ぎていては、この世は生きにくい、と悟った。

自分の自尊心の程度を下げる・・・下げざるを得ない・・・・

無垢な魂が汚れるのを感じ、気分が落ち込んだ。

 

それは、大なり小なり、思春期に誰もが味わうことかもしれない。

 

Kは大学生の時点で、まだプライド高く生きていたのだから

なかなか生きつらいことが多かっただろうと思う。

 

今の世の中にKがいたとしたら、どうだろう?

かなり浮いた存在だろう。

「こころ」の明治時代でも、相当浮いているようではあるが。

 

きっちりきっちり生きていくのは、しんどい。

もっとずるく生きてもいいのだ。

でも、その「しんどい」ことをやっている(修行)しているKの姿を

先生は尊敬していたし、こいつにはかなわない、と感じていた。

 

Kの生き方は賢かったか?

自ら命を絶つなんて、やはり愚かとしか言えない。

自分が理想とする姿と、現実の自分の実態のズレを埋められなくて、苦しんだ。

 

他に、経済的にも八方塞、

長年の親友の裏切り、

いや、大切な親友の気持ちを自分こそが傷つけ、追い詰めいてたという事実、気付かなかった自分の愚かさ、

親友の気持ちを尊重できない自分のエゴ、

親友の追い詰められた末の裏切り行為を許せない自分の心の狭さへの辟易・・・

 

いろんな感情が怒涛のように渦を巻き、溢れ・・・・Kは自分で自分を罰し、滅することを選んだのだろう。

 

自殺者は大抵、「自分がいなくなることが最良の解決策」と思い込み、事を図る。

思い込む時点で、既に精神を病んでいるわけで、

無論、実際、自殺は大変迷惑で、「最良の解決策」などでは、全く無い。

死んだら負けよ。

汚水をかぶっても、歯を食いしばって生きてりゃ、なんとかなる。

 

先生はKの自殺によって、心に重荷を負った。

自分のせいで、という気持ちや、ずるい自分を恥じる気持ちが、複雑に絡みついて、

先生は身動きできなくなってしまっている。

 

それは、Kが望んだことではないだろう。・・・たぶん。

 

自殺の際、先生との部屋の間仕切りの襖が少し、開いていたのは

きっと、第一発見者は先生であって欲しかったからだろう。

 

奥さんやお嬢さんを驚かしたくなかったのかもしれない。

 

でも、本当にそう思うなら、なぜお嬢さんたちと同居の家の自室で自殺するのか。

先生とお嬢さんの将来を願うなら、そっと出て行き、人知れず、命を絶った方がいいはずだ。

・・・・・そこまでの配慮ができるくらいの冷静さがあったら、自殺なんてしないのかもなぁ。。。

 

Kは、あるいは・・・

何かが違っていれば、優秀な頭脳と才能を生かし、

社会の役に立つ人間になっていたんじゃないだろうか。

会社員であっても、仕事ができそうな気がする。

ただ、あまり堅物では、社内での人間関係が上手く行かなくて、ちょっと大変かもしれないけど・・・。

でも、人としての芯をまっすぐに持っている姿勢は、いつの世でも

どんな世界でも大切だから、

もしもKがお嬢さんと上手く行き、少し柔軟さも持ち合わせるようになれていたら・・・・・

Kは社会に出ても、彼なりに美しく生きていけたのかもしれないとも思う。

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コメント

「こころ」は何度も何度も読みました。

高校時代はレポート用紙20枚のレポートまで書きました。
タイトルは「明治の精神と『こころ』」。

先生の遺書の中に、乃木希典が殉死するシーンがありますよね?
あそこを取り上げて論じました。

それから作中に何度か出てくる「さむしい」という言葉。
これこそ「こころ」を読み解くキーワードではないかな~?なんて思ったりします。

ちなみにわたしと友人の間では、
「先生ってホントに死んだのかなあ?」
っていうのが論争になりました。
だって先生の死のシーンは描かれていませんよね?
だから、先生の死は「精神的な死」ではないか?なーんて思ったりしたわけであります。

いつかめるさんとは読書談義がしてみたいです☆

■あかりちゃん

レポート用紙20枚!すごい。がんばったね~

明治の精神・・・・
「こころ」は、それが根幹になってる作品よね。。。

今の私達に
明治天皇崩御で乃木大将が殉死したからって、それに後追いする心情って、なかなか理解できない。

その時代の空気ってのは、やっぱいつの世も独特で
第二次世界大戦前の全体主義の雰囲気とか、
バブル期の享保的な雰囲気とか、
その時代ではみんながそうだったことも、時代が過ぎたら、「なんで??」って不思議なくらい。

先生は、病んでますよねぇ・・・
今ならいい薬も療法、カウンセリングもあるだろうに・・・

先生は実は死んでなかった、って思いたいよね。
それは、義経が実は生き延びていた、とか
川島芳子は生きていた、とかそういう類の願望なのかもしれないけど。

先生の「精神的な死」を「私」が救ってあげれた・・・って、そういうのを夢見ちゃうね。

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